Topics【Trends】最新のICT活用教育動向

【MicroMasters Vol.2】提供中のプログラムの地理的・分野的傾向

【Trends】第9回 2018年6月25日配信

Trends(「ICT活用教育の動向」)では、現在のICT活用教育をめぐるさまざまな話題を紹介していきます。

MicroMastersは、MOOC配信プラットフォームであるedXが展開する、複数のMOOCを束ねた教育プログラムです。「シリーズ〜MicroMasters〜」では、3回にわたり、MOOCを通じた新たな取り組みとして注目されるMicroMastersをご紹介します。

  • Vol.2:「提供中のプログラムの地理的・分野的傾向」(本記事)

本記事では、現在提供されているプログラムの現状を地理別・分野別に紹介します。

地理的傾向:北米やオーストラリアの大学を中心にアジアの大学も提供

MicroMastersは、2018年6月11日現在、アメリカ・カナダといった北米地域やオーストラリアなど、英語圏の大学を中心に、世界中の25の高等教育機関が46プログラムを提供しています(左下図)。

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(表をクリックしてPDFをダウンロード)

MicroMastersプログラム一覧(右上図)からは以下のことがいえます。

  • 各プログラムは平均で5コースから構成され、各コースの開講期間や週あたりの所要時間はコースによってかなり開きがあります。
  • 使用言語は、基本的に英語ですが、一部、スペイン語やフランス語で提供されているプログラムもあります。また、字幕だけではありますが、中国語やヒンディー語を利用できるプログラムもあります。
  • MicroMasters Credentialの取得に必要な金額は、約$1000となっています。

具体的なプログラム(抜粋)は以下のとおりです。

【アメリカ】

サプライチェーンマネジメントに関するプログラムで、MicroMastersのパイロットプログラムとして開講されました。詳しくは本シリーズVol.3で紹介します。

データ分析に関するプログラムで、すべての課程がオンラインでおこなわれる、ジョージア工科大学大学院の分析学修士課程 ("OMS Analytics (Online Master of Science in Analytics)") の一部に組み込まれています。

【ヨーロッパ】

オランダ・デルフト工科大学提供の太陽エネルギー工学に関するプログラムです。このプログラムには、同大学提供のMOOC "Solar Energy" の講師を務め、2016年に "edX Prize for Exceptional Contributions in Online Teaching and Learning" を受賞したArno Smets教授もプログラム提供者として名を連ねています。

【オセアニア】

人権問題の解決に関するプログラムです。人権問題に関わる社会福祉事業、開発事業、法律、健康、教育などの知識を得ることができ、アムネスティ・インターナショナルなどの組織・団体での活動に有用とされています。

【アジア】

香港理工大学 School of Hotel and Tourism Management (SHTM) が提供する、ホスピタリティ・マネジメントに関するプログラムです。SHTMは同校の教育・研究施設として五つ星ホテル Hotel Iconを運営しており、同ホテルは、本プログラムのMOOC内にも登場します。

分野的傾向:ビジネス・テクノロジー関連の分野が中心

6月11日現在、提供されている46のプログラムを分野ごとに集計すると、以下の表のようになります。

分野ごとのプログラム数と比率とその具体例(分野の分類はedXウェブサイトに準拠)
1 経営管理 26(57%) "Supply Chain Management"(MIT)
"International Hospitality Management"(香港理工大学)など
2 コンピュータ・
サイエンス
18(39%) "Artificial Intelligence"(コロンビア大学)
"Algorithms and Data Structures"(カリフォルニア大学サンディエゴ校)など
3 工学 12(26%) "Solar Energy Engineering"(デルフト工科大学)
"Robotics"(ペンシルバニア大学)など
4 データ分析・
統計
12(26%) "Analytics: Essential Tools and Methods"(ジョージア工科大学)
"Big Data"(アデレード大学)など
5 社会科学 8(17%) "Human Rights"(カーティン大学)
"Social Work: Practice, Policy and Resarch"(ミシガン大学)など
6 経済学・金融学 7(15%) "Business Fundamentals"(ブリティッシュコロンビア大学)
"Accounting and Financial Management"(メリーランド大学システム/
メリーランド大学ユニバーシティカレッジ校)など
7 コミュニケーション 5(11%) "Business Leadership"(クイーンズランド大学)
"Marketing in a Digital World"(カーティン大学)など

上記の表から、経営管理 (Business & Management)、コンピュータ・サイエンス (Computer Science)、工学 (Engineering)、データ分析・統計 (Data Analysis & Statistics)、経済学・金融学 (Economics & Finance) といったビジネスやテクロジー関連のプログラムが多数を占めていることが分かります。これは、ビジネス、テクノロジー関連のコースが約4割を占めているという近年のMOOCの傾向と比較しても、大きな割合であるといえます。ここからは、MicroMastersプログラムが、特定の職業に必要となる能力や専門知識の習得に対して大きな比重を置くプログラムであることが見て取れるでしょう。

まとめ:今後の展開は?

これまで北米の高等教育機関を中心に普及してきたMicroMastersですが、その一方でアジアからも3プログラムが提供されるなど、今後、北米に限らない地域での普及が予想されます。また、ビジネス、テクノロジー関連のプログラムが多数を占める中で、"Human Rights"(カーティン大学)や "International Law"(ルーヴァン・カトリック大学)、"Leading Educational Innovation and Improvement"(ミシガン大学)といったプログラムも提供されており、今後、ビジネスやテクノロジーに限らないプログラムもまた増えていくと思われます。

Vol.3では、MITが提供するSupply Chain Managementプログラムの取り組みをご紹介します。



(記事構成:河野亘・鈴木健雄)