2021年9月22日、Zoomを用いたオンラインによる「新任教員教育セミナー2021」を開催しました。本セミナーは、本学に採用された新任教員および助教から昇任された教員を対象に実施しています。セミナーでは「自由の学風」「対話を根幹とした自学自習」を理念とする本学の歴史と伝統、自律性を守りながら、「今の時代にふさわしい京都大学らしい教育」とはどのようなものなのかを考えるための機会と情報提供をしています。具体的なプログラムや第2部のグループ別セッションの内容については、FD研究検討委員会のサイトにて紹介しています。
今回の参加者は、当日配布資料の名簿に掲載された人数が180名、Zoom上では一番多いときで、170名程度でした。
第1部の全体会では、まず平島崇男理事・副学長(教育・情報・図書館)より「現在の京大生の動向と教育における諸課題」と題してオープニングレクチャーがありました。修了年限内に学士課程を修了する学生の割合や大学院(前期・後期課程)への進学動向などのデータが示され、より多くの学部生が大学院に進学し、専門性をもって社会で活躍することが、大学の大きな目標であることが示されました。そのために、10月には大学院教育支援機構が設置され、大学院生を対象とした様々な支援と機会の提供がなされることが共有されました。
次に、学生総合支援センターの杉原保史センター長より「コロナ禍における学生のメンタルヘルスについて」と題して報告がありました。通常とは異なる大学生活が長期化する中で、メンタルヘルス上の課題を抱える学生の増加が示され、授業や授業前後のちょっとした声がけにより、学生も不調を訴えることができるようになるため、こまめな対話の機会を設けることの必要性が指摘されました。
最後に、理学研究科の久家慶子教授より「私の授業」と題して、ご自身の教育活動に関する試行錯誤についてのお話がありました。地球物理学というのは、通常、大学までの段階で学ぶ機会のない分野のため、その面白さをわかりやすく、かつ、奥深いテーマとして伝え、より多くの学生に専攻してもらうためには、どのような授業を実践することが好ましいのかを追求してきたそうです。実際の授業の再現や、教育理念の共有、京都大学らしい教育に対する考えの変容なども共有されました。
これら第1部については、事後アンケートにおいても非常に満足が高く、データや具体事例などから多くを学び、考えるきっかけとなったことが明らかとなりました。
第2部は、参加型セッションとして、用意した6つのテーマごとに分かれてのワークショップが提供されました(表1)。今年度からの取り組みとして、英語によるセッションを立ち上げました。それぞれのセッションが終わった段階で解散となりました。
テーマ1 | 留学生とどう向き合うか | 環境安全保健機構健康管理部門(留学生相談室)講師 梁瀬まや |
テーマ2 | 研究室運営を考える | 学際融合教育研究推進センター准教授 宮野公樹 |
テーマ3 | 困難を抱えた学生に向き合うには | 学生総合支援センターカウンセリングルーム講師 和田竜太 |
テーマ4 | アクティブラーニング型授業をやってみよう | 薬学研究科教授 山下富義 高等教育研究開発推進センター教授 松下佳代 |
テーマ5 | これからのオンライン授業を考える | 情報環境機構教授 梶田将司 高等教育研究開発推進センター 准教授 田口真奈・酒井博之 |
テーマ6 | Internationalization of Japanese higher education and Kyoto University’s endeavors | 教育学研究科教授 高山敬太 |
参加者の事後アンケート(回答者数:101名)より、9割以上の方から有意義であった(「非常に有意義」から「全く有意義ではなかった」の5段階)との高い評価を得られました。具体的なデータや経験談、実践的な情報を得ることを通じて、京都大学での教育活動や教員としての役割について考える場になったようです。自由記述からは「第2部について複数のセッションに参加できるようにして欲しい」、「他部局の教員の交流の場となった」、「具体的な手法を学ぶことができてよかった」「フランクな雰囲気で肩の力を抜いて参加できてよかった」といった評価をうけました。
一方、改善点としては、一部、第2部のセッションタイトルの見直し(タイトルから想定される内容と実際の内容との齟齬)、全体の時間の短縮、分野によって異なる状況を踏まえた内容設定などが指摘されました。
今後について、取り上げて欲しいテーマには、学生が求めている教育や教員に対する要望、オンライン授業、ハラスメント対応、教育活動に関する教員間の調整などがあげられました。開催形態についてはフルオンラインでの開催を希望する回答が5割、オンラインでも対面でも参加できるように希望する回答が3割ありました。開催時期については、8月・9月での開催を求める声が一番多くきかれました。
いただいた意見も参考にしながら、今後もよりよいプログラムになるように改善していきたいと思います。
新任教員教育セミナー2021で紹介された「京都大学の教育サポートリソース」はこちらからご覧いただけます。