News【Trends】コロナ時代の高等教育の未来予想:EDUCAUSE Horizon Report 2021

2021.12.06

Trends(「ICT活用教育の動向」)では、現在のICT活用教育をめぐるさまざまな話題を紹介していきます。

米国の高等教育レベルのICT教育推進組織 EDUCAUSE が毎年公開するレポート EDUCAUSE Horizon Report: Teaching and Learning Edition が公開されています。このレポートは、その年の高等教育のトレンドを予想しようとするものです。
2021年のレポートの基調は、新型コロナ感染症流行前からの課題と、同感染症流行の結果新たに生じた課題が合わさったものとなりました。
同レポート内ではまず、今年のトレンドとして、以下のものが挙げられています。

予想される2021年の高等教育全体のトレンド

カテゴリー トレンド
社会 - リモートワーク・学習
- デジタル格差の拡大
- メンタルヘルスの問題
テクノロジー - ハイブリッド学習のモデルが普及
- 新たな教育向けテクノロジーの普及
- オンラインFD
経済 - 高等教育における基金の減少
- これまでにない/これまでとは異なる労働スキルへの需要増加
- 経済面での不透明性
環境 - 気候変動
- 出張の減少
- 持続可能な発展
政治 - オンライン上でのグローバリゼーションの拡大
- ナショナリズムの興隆
- 公的補助

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EDUCAUSE Horizon Report: Teaching and Learning Edition トップページのイメージ(クリックしてレポートが公開されているページへ)

また2021年、高等教育の分野で重要となると思われるテクノロジー並びに実践として、計141の候補のうちから以下の6つが選ばれました。

・AI(Artificial Intelligence)
・ブレンディッド/ハイブリッドなコースモデル
・ラーニング・アナリティクス
・マイクロ・クレデンシャル
・OER(Open Educational Resources)
・質の高いオンライン学習

これらのトレンドと、キーとなるテクノロジー、実践の分析結果を踏まえて、同レポートは、高等教育における教授・学習において今後あり得る、以下のような4つの未来予想(シナリオ)を提示しています。

シナリオ1:成長(Growth)
オンライン/ハイブリッド型授業・教育が継続・拡大し、マイクロ・クレデンシャルやリカレント教育の普及により、大学の財政が安定化する未来。学生の学習経験をより豊かでかつ確固たるものにしようと教員が努力するなかで、FDへの需要が高まる。

シナリオ2:制約(Constraint)
COVID19のパンデミックを受け、大学教育が痩せほそり、そこで用いる資源も限られてくる未来。ある大学では、以前より数の減った学生に対して、伝統的な教育モデルを維持すべく、これまでより多くのことを実施することになる一方で、ある大学では、持続性や多様性、平等、包含といった観点が重視され、これまでとは異なるイノベーティブな教育モデルのもと、より多くの学生をより効率よく教育できるようになる。

シナリオ3:崩壊(Collapse)
教育機関への公的予算が枯渇し、また、学費に依存する機関も学生数の減少により経営が成り立たなくなる未来。研究活動は協調性を失うとともに、予算確保の必要性から独自性・独立性を失う。効率性を求めてリモート学習が進められるものの、それに対する建設的批判や効果的なFDがなされず、陳腐化していく。

シナリオ4:変性(Transformation)
「いつでも・どこでも」教育を受けられるモデルが普及することで、より多くの人が学位や資格を求めるとともに、無料の教育プログラムを求めることができるようになった未来。学生のメンタルヘルスも、それぞれの教育機関がより人間的で合理的な学習方法を認めることで改善する。そして高等教育を受けている人の割合が、歴史的な規模で世界中で拡大する。

これらのシナリオはいずれも極端なもので、実際には複数のシナリオが混ざり合ったものとなるだろうことを Horizon Report は認めています。
なお、同レポートでは他にも、エッセーが掲載されています。2021年後半から22年前半にかけての高等教育の状況に関心のある方は、ぜひ一度ご覧ください。

EDUCAUSE Horizon Report: Teaching and Learning Edition (Published: April 26, 2021)

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