Topics開催報告

学内ワークショップ
「京大発のサステイナブルな教育拡張の可能性を探る」

公開日:2020年5月1日 

2020年1月29日、教育コンテンツ活用推進委員会主催の教職員向けワークショップ「京大発のサステイナブルな教育拡張の可能性を探る」を開催しました。

学内17部局から26名の教職員が参加した本ワークショップでは、議論に先立って、ICTを活用しながら学外に開かれた有料教育プログラムを展開されている2つの学内事例について、2人の先生からご紹介いただきました。

そののち、さまざまなプログラムの提供が大学に求められる一方で資源が限られているなかにあって、プロジェクトを継続さらには発展させていくために何が必要となるかについて、5つのグループに分かれて議論しました。

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左:グループワークの様子。白熱した議論が交わされていた。
右:当日の司会を務めた田口 高等教育研究開発推進センター 准教授。

プログラム

2020年1月29日(水)於 吉田南1号館 201号室

司会:田口 真奈(高等教育研究開発推進センター 准教授)

話題提供1

11:00~11:15 「オンラインコース『教育評価の基礎講座』について」
  西岡 加名恵(教育学研究科 教授)

話題提供2

11:15~11:30 「FCME(ふくみん)の取り組みについて」
  谷 昇子(医学教育・国際化推進センター 特定研究員)

グループワーク

11:30~12:00 「京大発のサステイナブルな教育拡張の可能性を探る」

話題提供1

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西岡先生による話題提供の様子

本ワークショップではまず、教育学研究科の西岡加名恵教授より、オンラインコース「教育評価の基礎講座」に関する話題提供がありました。同コースは、教育学研究科が提供している「E.FORUM『全国スクールリーダー育成研修』」の一環として、2019年度から開講されているものです。5回のオンライン講義で構成されており、各回の講義動画を全て視聴しミニテストに回答し合格点を取ることで、修了証を受け取ることができる仕組みとなっております。
初年度にあたる2019年度は、現役教員を中心に45名の方々が参加しました。近畿・中四国・中部以外からの参加者が半数以上を占めるなど、遠方に住む参加者も多かったそうです。

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西岡先生のオンライン講義の様子

西岡先生によると、基本的な知識を提供するのに向いている、ミニテストの採点も自動化できるため一度コースを作ってしまえば講師が大きく手を加えずとも開講し続けることができるといったメリットの他に、オンキャンパス型のコースとは違い、天災による影響を心配することなく開講できるメリットが大きかったそうです。

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谷研究員による話題提供の様子

次に、医学教育・国際化推進センターの谷昇子特定研究員から、現役の医師向け教育プログラム「FCME(ふくみん)」に関する事例紹介がありました。
同プログラムは、文部科学省課題解決型高度人材育成プログラムとして2015年度に始まった取り組みで、2018年度末に同省からの助成が終了したあとも同センターが主体となって継続開講されています。
主たる対象者は、医学生の教育や研修医指導などの指導経験がある医師の方々です。

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FCMEで授業の様子(当日の発表資料より)

集中講義形式で年3回計12日間実施する「参加体験型授業」と、月2回各2時間ずつオンラインで実施される「Web討論型学習」を組み合わせた履修プログラムからなり、計120時間以上履修し各科目で合格基準に達することで、履修修了証を受け取ることができます。毎年定員を大きく上回る数の応募があり、文部科学省からの助成金終了に伴ってプログラムが有料化された初年度にあたる2019年度にも、多くの受講申し込みがあったそうです。

受講生の選考に際しては、診療科や年齢、性別、居住地等がなるべく多様なものとなるよう配慮されており、また、多様性を尊重するためにもオンライン授業の実施に際しては様々な工夫をこらしているそうです。

グループワーク

このような2つの事例を踏まえつつ、グループワークでは、参加者の所属部局や専門分野に即して、持続可能でかつ発展的な教育プログラムを実施する上で何が必要になるかを議論しました。

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議論は、主に、

  • 収益化の方策
  • プログラム運営上の工夫や経験談
  • 今後の展望・アイデア
という3つの観点について盛り上がったようです(グループ毎の議論の内容の抜粋は以下にまとめています)。

時折、他のグループでの議論の声に、自グループの議論の声がかき消されるほどの盛り上がりをみせたディスカッションを経て、1時間のワークショップは終了しました。
グループ毎の議論の内容の抜粋
    【グループA】
  • 事業継続という観点からすると、開始直後からの黒字化というのは難しい。ある程度長期的な視点が必要となるだろう。
  • 毎年プログラムのアップデートが必要となるが、その点が大変だ。
  • (上の意見を受けて)ICT等を活用して負担を減らすというのは、一つの方法だ。

  • 【グループB】
  • 紹介のあったプロジェクトはいずれも大変有意義なものだが、事業という観点からすると収益性が低いのが残念だ。
  • (今回紹介のあった事例とは別に)多くの受講生が見込めたとしても、事業として継続的に実施することが難しい。
  • オンキャンパスの良さとして例えば、交流会的な形で、参加者同士の繋がりができるということがある。オンラインとオンキャンパス両者を併用したハイブリッド型の研修は、実際にニーズがあるだろう。

  • 【グループC】
  • 現在、すでにSPOCを公開しているが、それを元に、特定の地域の学生1000名規模を対象としたプログラムを開講したいと考えている。今後、京大オリジナルも絡めつつ、収益化も視野に入れて検討していく予定だ。

  • 【グループD】
  • 収益モデルというのは本日初めて聞いた。実際にやってみる上ではニーズの発掘が必要となるだろう。
  • 既存のプログラムにオンラインを入れ込みハイブリッド型で実施するというのも手では。例えばオンラインで授業を行ったあと、最終日だけ京都に来るとか。これはリカレントだけでなく高大接続の文脈でも有効では。
  • 卒業生を対象に、働きながら博士号を取得したいというニーズは確実にある。オンライン授業の併用はそこで活きてくるだろう。そういった層はモチベーションも高いのでオンラインでもついてくるはずだ。
  • オンライン授業のコンテンツ作りという観点からいうと、学部生向けの講義ならコンテンツの鮮度は比較的長くもつが、大学院生向けだとアップデートの頻度を高くする必要がある。コンテンツの作り込み度合いがそこで変わってくるだろう。後者については、プラットフォームや仕組みづくりのウェイトが大きくなるだろう。

  • 【グループE】
  • 専門家向けの修了証を発行するプログラムとしては、獣医向けのプログラムの存在を聞いたことがある。15回分は自宅で動画を見て問題を解き、最後にオンキャンパスで。受講料は比較的高いが直接キャリアアップにつながるものなので、ニーズは高いと聞いた。
  • 受講生を集める上で、資格や修了証という仕掛けは必須となるのか?
  • (上の質問に対して)資格の他に学ぶ動機があれば、受講生は集まる。海外事例だが、プログラミング言語のPythonに関するMOOCコースの一つで、1000万単位での受講料収入があり、大学、担当講師の手元に半額ずつ入ったと聞いた。
  • (上の議論を受けて)ボランタリーベースでは最初はうまくいっていても、数年経つと、講師の側で継続することが苦しくなってくる。継続のためにはわかりやすいインセンティブは必要だろう。ただし、そのためにも制度面で整備をしてもらいたい。
  • (上の議論を受けて)制度面の制約という点では、京大オリジナルを利用することで、比較的柔軟なプログラム設計が可能になるだろう。