Topics【Trends】最新のICT活用教育動向

メディアを利用して行う授業

 

メディアを利用して行う授業に関する省令が平成13年に制定されたことを知っていますか?
近年、海外の大学を中心にメディアを活用した授業が増えている中、国内でもメディア・ICTを利用した授業が増えつつあります。しかしながら、どういった形式・内容の授業を行うことができるかの理解については、浸透しているとはいえない現状があります。
「出張のときの授業にICTが活用できるの?」「隣りの研究室の先生は教室に行かずに授業したらしい!」「よその大学では1度も大学に行かずに修士号が取得できると聞いたけど、本当?」
......そんな教員の声に応えるべく、本記事では、現在認められているメディアを利用して行う授業の在り方や国内の実際の事例について徹底解説します。

1. 「大学設置基準ではどこまで認められているの?」

(1)「メディアを利用して行う授業」の要件

現在、メディアを利用して行う授業として下記のいずれかの方法をとることが大学設置基準において認められています(赤字箇所をクリックすると、原文が表示されます)。

【大学設置基準 第25条 第1項及び第2項】    

第1項:授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
第2項:大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。



【平成13年文部科学省告示第51号(大学設置基準第25条第2項の規定に基づき、大学が履修させることができる授業等について定める件)等の一部改正(平成19年文部科学省告示第114号)】    

通信衛星、光ファイバ等を用いることにより、多様なメディアを高度に利用して、文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもので、次に掲げるいずれかの要件を満たし、大学において、大学設置基準第25条第1項に規定する面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。

一 同時かつ双方向に行われるものであって、かつ、授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所(大学設置基準第31条第1項の規定により単位を授与する場合においては、企業の会議室等の職場又は住居に近い場所を含む。以下次号において「教室等以外の場所」という。)において履修させるもの。
【「メディア授業告示第1号」】

二 毎回の授業の実施に当たって、指導補助者が教室等以外の場所において学生等に対面することにより、又は当該授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかにインターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されているもの。
【「メディア授業告示第2号」】



同時かつ双方向に行われるものであって、かつ、授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所(略)において履修させるもの

毎回の授業の実施に当たって、指導補助者が教室等以外の場所において学生等に対面することにより、又は当該授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかにインターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されているもの

①は、メディアを利用して、遠隔で映像・音声のやりとりをおこなうリアルタイムの授業です。
テレビ会議システム、Skype、Zoom等のICTを用いて、「同時」かつ「双方向」で遠隔授業をおこなうことが該当します。教室は、大学の一教室、大学図書館のラーニング・コモンズ、会議室等、「授業を行う教室等以外の教室、研究室またはこれらに準ずる場所」が利用可能とされています。

②は、メディアを利用して講義内容を教授し、その後、学生の意見・質問・コメントに応対する授業です。
MOOC、SPOCを利用したり、YouTubeなどとLMSやメールなどを組み合わせることが考えられます。

学修時間と授業時間について
メディアを利用して行う授業でも、下記の単位の考え方は変わりません *。

  • 1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容で構成する
  • 講義および演習については、15時間から30時間までの範囲で定める時間の授業をもって1単位とする

*【大学設置基準 第21条 第2項】
第2項:前項の単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。
一 講義及び演習については、15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
二 実験、実習及び実技については、30時間から45時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし、芸術等の分野における個人指導による実技の授業については、大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。
三 一の授業科目について、講義、演習、実験、実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については、その組み合わせに応じ、前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。

(2)どこまで認められる?〜4つのケースから〜

ここで、想定されるケースを考えてみましょう。以下の4つのケースはメディアを利用して行う授業の要件を満たしているでしょうか。解答と解説をクリックすると各ケースの説明が表示されます。

<ケース1>
昨年度、授業をOCWとして撮影してもらった。来月の出張の際に、その映像を教室でTAさんに再生してもらって、それをもって授業1回分としよう。補講をする手間が省けて助かるなぁ〜。

解答と解説1:    

      いいえ、満たしていません。
このケースは②に関連しますが、メディアを利用して行う授業として対面授業1回分に代替させるためには、メディアを利用した講義内容の教授だけでなく、その後、学生の意見・質問・コメントなどに対応できるようにする必要があります。

<ケース2>
最近、子どもが生まれた学生が、自宅から授業に参加したいと言っている。ビデオ会議用のツールのZoomで教室とその学生の自宅とをつなげば、同時に参加してもらえるな。スムーズに授業ができるように接続環境を整えないといけないな。

解答と解説2:    

      はい、満たしています。
このケースは①のメディアを用いた、「同時」かつ「双方向」の遠隔授業に相当します。このケースでは受講生が遠隔で参加していますが、教員が遠隔で講義することも大学設置基準で認められています。

<ケース3>
他の先生が反転授業のために作成した動画を参考にして、自分で講義部分のYouTube動画を作成したぞ。いつもの自分の授業よりわかりやすいくらいの力作になったから、今度の出張の日の授業で見せて、授業1回分に代えるようにしよう。

解答と解説3:    

      いいえ、満たしていません。
このケースは②の要件に関連しますが、自分が作成したコンテンツを用いたとしても、ケース1と同様に、講義の映像を見せるだけではメディアを利用して行う授業とはみなされません。

<ケース4>※2020年4月8日 質問と解説が加筆・修正されました。
次の授業で扱う学習内容について、うまくまとまっているYouTube動画を見つけたぞ。今度の出張の日の授業は、この動画を見てもらい、あらかじめオンライン上にアップロードしておいた、例年、自分で授業中に行っているのと同じ内容の解説を読んでもらおう。演習課題は、対面授業の時間を使ってTAさんにやってもらおうかな。学生からの質問も基本的には心配なさそうだけど、もし対応に困る質問やコメントがあったら、出張から戻ってから対応するようにしよう。

解答と解説4:    

      はい、満たしています。
このケースは②「オンデマンド型」に該当します。
授業担当者が、学生に授業の目標や学ぶべき事項、課題を提示して学習させるのであれば、他人が作成した教材を用いても問題ありません。ただし、面接授業に相当する教育効果を有することを前提とします。
また、「メディア授業告示第2号」における「十分な指導」を、指導補助者が行うことも可能です。

指導補助者:「当該授業を行う教員の補助として、当該教員の指導計画の下で、当該教員と密接な連絡をとりつつ学生等に対して質疑応答等の指導を行う者を指し、当該授業の分野に係る学士以上の学位を有しているなどこれらの指導を十分に行い得る資質能力を有する者」のこと(文部科学省「大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について(通知)」2007年7月31日

(3)「メディアを利用して行う授業」の修得可能単位数の上限

卒業・修了に必要な単位数におけるメディアを利用して行う授業の修得可能単位数の上限は、次のようになっています。


  • 学部(通学制):卒業に必要な単位数(124単位以上)のうち、60単位まで **
  • 学部(通信制):卒業に必要な単位数(124単位以上)すべて
  • 大学院:修了に必要な単位数(30単位)すべて

** 平成11年3月31日通知の「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行等について」により、メディアを利用して行う授業の単位数上限が30単位から60単位に引き上げられています(大学設置基準第32条第5項)。

【大学設置基準 第32条 第1項及び第5項】    

第1項:卒業の要件は、大学に4年以上在学し、124単位以上を修得することとする。
第5項:第1項の規定により卒業の要件として修得すべき124単位のうち、第25条第2項の授業の方法により修得する単位数は60単位を超えないものとする。


2. 10年以上前から実施されているオンデマンド授業

早稲田大学では、メディアを利用して行う授業として「オンデマンド授業」が10年以上前から実施されています。オンデマンド授業は「フルオンデマンド授業」・「オンデマンド併用授業」の2種類に分けられます。

フルオンデマンド授業とは、曜日や時限が指定されず、すべての授業(ガイダンスや試験を除く)で学生の都合のよい時間・場所で受講できる授業です。

オンデマンド併用授業は、教室での対面授業とオンデマンド形式の授業が併用される授業で、曜日時限の指定のある対面授業と、オンラインのオンデマンド授業が1週おきに実施されます。

早稲田大学のオンデマンド授業は2001年から実施されています。
実施にあたっては、2014年から同大学の大学総合研究センター教育方法研究開発部門(CTLT)が中心的役割を果たしています。
2012年時点でフルオンデマンド授業は131科目が開講され、のべ26,463人が履修し、オンデマンド併用授業は308科目が開講され、のべ15,879人が履修しています (森 2014)。

参考:
早稲田大学 大学総合研究センター教育方法研究開発部門(CTLT)ウェブサイト
森裕樹(早稲田大学 大学総合研究センター). 2014. 「教育と学修内容の公開プラットフォーム 『Waseda Course Channel』のご紹介」
・早稲田大学のメディアを利用して行う授業の規定(下記の赤字箇所をクリックすると、規定の原文が表示されます)

【早稲田大学のメディアを利用して行う授業の規定】    

早稲田大学では、下記の3要件を満たすメディアを利用した教育方法を、教室での対面授業1回分に相当するものとして規定しています。

・「担当教員から学生に教材や課題の提示がある」
・「学生からの課題提出の機会、および提出課題に対する担当教員からのフィードバックがある」
・「学生の意見交換や質問の機会が確保されている」

これらの要件のもとで、具体的な実施方法として、早稲田大学では次の3つの特徴を持つ授業形式が想定されています。

・「オンデマンド授業コンテンツを教材として配信し、内容に関して学生に課題を課す」
・「課題に対して、LMSの小テストやレポート機能を利用して提出を受け付け、フィードバックする」****
・「学生間の議論や担当教員への質問は、LMSのディスカッション機能などを用いて行う」

**** LMSとは学習管理システム (Learning Management System) のことです(例:京都大学におけるPandA)。京都大学のLMSであるPandAについての詳細はこちらをご覧ください。



3. 通学制のフルオンライン型大学院プログラム

通信制の学部・大学院では遠隔教育が盛んにおこなわれていますが、熊本大学大学院社会文化科学教育部教授システム学専攻は、通学制の大学院としては珍しいフルオンライン型のプログラムを提供しています。

eラーニングの開発・実施・評価のプロフェッショナルを養成する同大学院社会文化科学教育部教授システム学専攻では、一部のプログラム(公開学位審査会)を除き、ほぼすべてのプログラムがオンラインで実施されます。

同大学院プログラムの授業はすべて、受講者の都合に合わせて、いつでも、どこからでも受講することができます。
また、授業では、印刷テキスト、ビデオオンデマンド(VOD)、クイズなどの教材の提供や、オンライン掲示板でのディスカッションがおこなわれます。また、2年次には指導教員からeラーニングシステムを利用した研究指導(遠隔指導)が受けられます。また、以下の学生の声をみると、学生同士のコミュニケーションは大学が提供するオンライン掲示板だけでなく、メールや、Skype、FacebookなどのSNSも用いられているようです。

このように、同大学院プログラムはオンラインによる遠隔学習を特色としているため、年齢層や住所、社会経験などさまざまな学生が全国に在籍し、仕事等との両立をはかりながら学習・研究をおこなっています。

参考:
熊本大学大学院社会文化科学教育部教授システム学専攻 学生データ(平成26年4月現在の在籍学生の年齢構成や在職先など)
熊本大学大学院社会文化科学教育部教授システム学専攻 学生の声

(公開日:2020年3月9日)