プレFDとは、これから大学教員（ファカルティ）になろうとする大学院生やOD（オーバードクター）・ポスドクのための職能開発の活動のことです。大学教員の仕事には、教育、研究、管理・運営、社会貢献などがありますが、プレFDでは、なかでも教育能力の開発に重きが置かれています。「プレFD」というのは和製英語で、アメリカでは、Preparing Future Faculty（PFF）と呼ばれています。日本では、2008年の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」において「教育研究上の目的に応じて、大学院における大学教員養成機能（プレFD）の強化を図る」とされたことも手伝って、この数年、プレFDを実施する大学が増えてきました。代表的なところでは、京大の他に、名古屋大学、広島大学、東北大学、北海道大学、一橋大学、筑波大学、東京大学などがあります。
京大では、本センターが関わっているプレFDとして、現在、次の４つの活動が行われています。
1. 大学院生のための教育実践講座（詳細はこちら）
この講座は、本学の大学院生やOD・ポスドクに対して、大学教員へと自己形成していくきっかけとなる場を提供しようとするものです。毎年、８月上旬に、丸一日のワークショップとして実施されています。最初は１講座でしたが、講座修了者からの希望を受けて、2008年度から、Basicコース［大学院在籍者／初参加者向け］（
Basicコースの詳細はこちら）とAdvancedコース［OD・ポスドク／本講座参加経験者・大学授業経験者向け］（
Advancedコースの詳細はこちら）の２講座になりました。参加者には総長名の修了証が授与されます。
（主催：京都大学FD研究検討委員会、共催：高等教育研究開発推進センター）
2. 文学研究科プレFDプロジェクト（詳細はこちら）
文学研究科では、2009年度から、OD・ポスドクの支援策の一つとして、彼らを非常勤講師として任用し、リレー講義という形で学部の入門科目を担当させるという取組が行われています。このリレー講義をプレFDの機会にもしようとして始まったのが、本プロジェクトです。文学研究科には、６つの系がありますが、そのうち思想文化学系、現代文化学系、行動文化学系の３つがこのプロジェクトに参加しています。
フィールドになっているのは、主に１・２年生向けに開講される「哲学基礎文化学系ゼミナール」「基礎現代文化学系ゼミナール」「行動・環境文化学系ゼミナール」という３つの授業です。毎回、授業が公開され、授業終了後、30分程度の授業検討会が行われます。加えて、年度初めと年度終わりには、事前研修会と事後研修会も開かれます。講師をつとめたOD・ポスドクには、授業担当、授業検討会および研修会への参加を条件として、総長名の修了証が授与されます。
実際に授業を担当するというOJT（On-the-Job Training）の形でプレFDを行うという取組は全国的にみても珍しく、きわめて先進的な試みです。本プロジェクトの内容と成果は、田口 真奈・出口 康夫・京都大学高等教育研究開発推進センター編『未来の大学教員を育てる—京大文学部プレFDの挑戦—』（勁草書房、2013年）（ ）として刊行されています。
（主催：文学研究科・京都大学FD研究検討委員会、協力：高等教育研究開発推進センター）
3. 研究科横断型プログラム「大学で教えるということ」（詳細はこちら）
「大学で教えるということ」は京都大学の「研究科横断型教育プログラム」において開講される集中講義です。京都大学のような研究大学は、大学院生を優れた研究者としてだけでなく、優れた教育者としても育成する必要があります。そこで本センターは、本プログラムを京都大学の正規の授業に取り入れる形で展開しています。平成24年度より開講されており、どの研究科に属する大学院生も履修することができます。
4. コンソーシアム京都との連携による文学部単位互換リレー講義（詳細はこちら）
「文学研究科プレFDプロジェクト」は、実際に教壇に立つ経験を核とした、もっとも完成度の高いFDプログラムの一つです。しかしながら、このプログラムは個別テーマのリレー講義形式で構成されるため、現状では講師が経験できるのは、90分の授業を数回デザインすることに限られます。そこで新たな試みとして、半期15回の講義全体をデザインするという経験を積むことを主眼に、文学研究科プレFD修了生を中心とした発展的なプログラムが始動しました。2015年から大学コンソーシアム京都との連携により、他大学の学生も対象とした魅力的な単位互換授業が提供されます。プレFDの発展的プログラムの一つとして、本リレー講義に学内外から広くご注目いただければ幸いです。
