Topics教員インタビュー

講義をもっとオープンに

京都大学 大学院医学研究科 山田亮先生

山田先生は、統計遺伝学を扱った「005x: Introduction to Statistical Methods for Gene Mapping」というMOOCコンテンツで講師を担当されています。2016年2月の配信開始という予定の中で、先生はその半年ほど前から制作に参加され、1か月間にわたる配信期間中もその運用に携わってくださいました。講義期間終了後、山田先生から、実際にMOOCの制作と運用に参加してみて感じられたことなどについて伺いましたので紹介いたします。

MOOCというシステムを利用して大学院教育をやると何ができるだろう

まず、MOOCの制作依頼を受けたときの率直なご感想をお聞かせ願えますか。そのとき、すでにMOOCの存在はご存知だったのですか。

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京都大学がMOOCに参加したというのは、それまでに学内広報等で知ってはいました。スーパーグローバル大学創成支援プロジェクトの一環として依頼を受けたときも、大変だなとは思いましたが、それまでも普段の講義ではウェブを活用して実習をやっていたため、そんなに面倒だとは思わなかったです。これまでやってきた大学院の教育を大人数を相手にシステム上で実施するというのはどういうことかなという点に、興味がありましたね。

実際にMOOCを制作されたわけですが、普段の講義とMOOCとでは、何か違いはありましたか。

普段の講義とは異なるため、追加でやらなければいけない作業はやはり多かったですね。また、普段の講義では、受講生とやりとりをしながら話を進めていくことが多く、一方的に話す形式には慣れていなかったため、どれくらいの内容を喋るとどの程度の長さのコンテンツができるのか見当をつけることがはじめは難しかったです。あと、映像の撮り方やコンテンツの切れ目について事前にもう少し分かっていたら、効率が良かったかもしれません。
ただ、準備の途中からは、僕がMOOC制作のペースに合わせようとして焦るより、提供するコンテンツを僕のペースに合わせて作成した方がいいのかなと思って準備を進めました。その分、制作チームの皆さんに迷惑がかからないように気は遣いました(笑)。

先ほど普段の講義でウェブを活用されていると仰っていましたが、どういったかたちで使われているのですか。

学生には基本的に全員PCを持参してもらい、そこで使えるものは色々と使っています。例えば、プログラムのソース・コードを書いて学生と共有するなどです。他によくやることとしては、レポート課題をウェブに上げてもらい、学生同士で見られるようにして、お互いに補いあいながら勉強を進めてもらう、といったことです。

いい意味で講義内容にあった人が残ってくれたと思っています

MOOCの講義が始まると、掲示板上で受講者同士がやりとりしたり、TAの皆さんも質問に対して熱心に返答されていました。先生はそれをご覧になってどのような印象を受けましたか。

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掲示板での対応は基本的にTAの人たちに任せていたので、具体的なやりとりの全容までは知らないのです。ただ、返答に困った質問に関しては僕と相談して対応してもらうようにしていました。そこで上がってきた質問内容を見る限りでは、「すごくできる人が受講しているわけではないけど、全くできない人が受講しているわけでもないな」という雰囲気が伝わってきました。TAの人たちには、丁寧に答えるところは答えたら良いけれど、丁寧に答えても仕方がないところは、「分からないっていうこと自体が課題ですよ」と返してもらうように伝え、講義としての筋が外れないようにはしていました。受講者の学習歴を見る限りでは、いい意味で講義内容にあった人が残ってくれたと思っています。

事前学習の教材としてMOOCを活用してもらえたら

今後、普段の先生の講義でMOOCを活用することも、考えていらっしゃるのですか。

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MOOCを講義の一部に代用して、出張中の自習課題にできたら良いですね*1。他には、必要となる前提知識を学んだことのない学生に、事前に一部のMOOCを受講してから参加してもらうという活用方法も考えられますね。大学院は高等教育の最後の機会なので、学生に求めるレベルは下げたくない。積み上げ式じゃないとできないこともあるので、いくらもともとの専門は違っても、専門的な知識が必要になることもあります。MOOCに限らず、色んなところに色んな教材があって、時間さえかければできるのだから、ある程度の知識をもって授業に挑んでもらえたら嬉しいですね。

今後、再度開講されるとして、その際に今回制作したMOOCに何か付け加えたいことはありますか。

今回出した4週間分に関して何か変更を加えたいというのはないのですが、各週の内容はある程度独立しているので、週毎に必要に応じて受講してもらうというのはありかと思っています。

「統計遺伝学」というテーマを学べる世界で唯一の場として、世界に開かれていたら、学びたい人にとってはとても役に立つのではないでしょうか。

この講義の内容を本で勉強すると大変ですが、動画や画像、そしてプログラミングなど学ぶために必要な教材を一度に提供できるので、より実践的に学べると思います。今回のような形で、その都度、質問に対して答えるなどのフォローはできなくても、このような学習コンテンツを常にオープンにしておくのはいいことかもしれないですね。

(聞き手:岡本雅子・酒井博之・田口真奈・香西佳美/記事構成:鈴木健雄・奥本素子)

*1 文部科学省令「大学設置基準」の第二十五条においては下記のように多様なメディアを利用して授業を実施することを認めています。

第二十五条 2
大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室以外の場所で履修させることができる。

その際の要件として、「同時かつ双方向に行われる」場合か、もしくは「インターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問回答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されている」必要があります。

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