Topics開催報告
ワークショップ "Expand your borders, experience Virtual Exchange!"
公開日:2020年5月12日
2020年3月12日、世界のトップ大学が加盟するグローバルな教育プログラムであるVirtual Exchange Program(以下、VEPと表記)* をテーマとするワークショップ "Expand your borders, experience Virtual Exchange!"(主催:京都大学高等教育研究開発推進センター)が開催されました。
オランダ・ワーヘニンゲン大学でオープン&オンライン教育チームの一員としてVEPの運営に携わっている Iris van Hal 氏を迎え、オンライン講義を用いたヴァーチャルな留学(Virtual Exchange)を通じた新しい学びの可能性について議論しました。本ワークショップには、25名の教職員・大学院生が参加しました。
* VEPについてはこちらの記事をご覧ください。加盟校には、ワーヘニンゲン大学の他に、オランダ・デルフト工科大学、アメリカ・ライス大学、香港科技大学といった世界のトップレベルの大学が含まれています。
当日のプログラム
2020年3月12日(木)於 吉田南1号館 201号室
司会:田口 真奈(高等教育研究開発推進センター 准教授)
講演
12:00~12:20 "Expand your borders, experience Virtual Exchange!"
Iris van Hal 氏(経済学研究科 特別研究学生/オランダ・ワーヘニンゲン大学大学院 修士課程院生)
グループワークと質疑応答
12:20~13:00 テーマ: "How do you envision the future of (online) education?"
講演中の Iris van Hal 氏
画像クリックで、当日の様子(動画:京都大学OCW)がご覧になれます。
司会を務めた田口 高等教育研究開発推進センター 准教授
ワークショップの概要
van Hal 氏による講演では、自己紹介ののち、VEPの概要の説明がありました。VEPはMOOCを利用した大学間の単位互換プログラムです。協定大学の学生は他大学が提供する単位認定対象のコースを選び、自大学での手続きを経てコースを受講します。受講後、プログラム参加者向けの最終試験に合格するなど一定の条件を満たすことにより、自大学の単位を取得することができます。
海外渡航による一般的な留学プログラムと同様に、国外の大学の講義を受講し、単位を取得することができること、そして、オンラインで時間的・空間的制約を超えられるという柔軟な学習形式の強みを活かし、国の枠を超えた学習経験が享受できることがVEPの特長であるとvan Hal 氏は指摘されました。
講演の後、短い質疑応答を経て、参加者のグループごとのディスカッションに移りました。ディスカッションでは "How do you envision the future of (online) education?"〔(オンライン)教育の未来をどう見通すか〕をテーマに、今後の高等教育において予想されるさまざまな状況に関して、VEPのようなオンライン教育/オンライン学習が持つ可能性だけでなく、質保証やアクセシビリティ、持続可能性といった観点について議論が交わされました。
グループワークで出た意見(抜粋)は以下の通りです。
- グループワークで出た意見の抜粋
-
-
【学習環境の構築について】
- 学習環境、あるいは「学習における生態系("learning ecosystem")」の観点についてはどうか。オンライン教育・オンライン学習は魅力的な面もあるが、教室環境でしかできないこともあると思われる。
- (上の発言を受けて)オンライン講義を利用した反転授業や協働学習のようなブレンディッドな教育方法は大いに可能性があると思われる。
- 海外の大学とのオンラインでの交流を通じて、学生に国際的な協働学習を提供する教育手法であるCOIL (Collaborative Online International Learning) のような取り組みもある。
(COIL:ニューヨーク州立大学が2006年に開発した、オンラインによる国際的な協働学習をおこなう教育手法・教育プログラム。参考:ニューヨーク州立大学COILセンターWebサイト) - 学生は互いに仲良くなりながら受講登録をし、授業を受ける。オンラインのみの学習では、そういったコミュニティ形成の観点も念頭に置く必要がある。
- コロナウイルスや気候変動が発生した場合などのやむを得ない状況において、VEPのようなオンラインでの教育・学習は解決策となりうると思われるが、アクセシビリティの問題はどう解決するべきか。
- 日本の学生のように、コンピュータは持っていないが、スマートフォンならば持っているという場合はありうる。いわゆるデジタルデバイドの問題は重要な観点だろう。
- オンライン教育の場合、制作のために必要となるリソースをどう確保し続けられるかという観点も含まれてくると感じた。
【学生間のコミュニティ形成について】
【アクセシビリティについて】
【持続可能性について】
事後アンケートの結果と感想
事後アンケートには21名(全体の84.0%)から回答があり、有意義度を5件法で聞いたところ、4.75と高い評価が得られました。また自由記述による感想には以下のようなものがありました。
ワークショップ終了後の記念写真
ワークショップには、お忙しいなか、北野正雄教育担当理事・副学長(写真右)も駆けつけて下さりました。写真左は飯吉透教育担当理事補・高等教育研究開発推進センター長・教授。
自由記述による感想(抜粋)
- 他大学のオンライン教育への取組を知る貴重な機会となりました。単位を獲得できるとなれば、学生のモチベーションも変わってくると思いますし、こういうシステムが一部でも取り入れられる日がくるとよいなと期待しています。
- This was helpful in anticipating what the requirements for online courses will be. I learned about COIL, which I will learn more about. This was very useful.
- 前向きかつ積極的な院生の方が提案し、実行したワークショップ。前向きなエネルギーを頂き、大変刺激になりました。素晴らしい機会をありがとうございました。
- Thank you! It was fun and it is good to think of the future how we can make it better.
- 大学とは何か(どんな機能をもっているのか)を今一度考えさせられた機会でした。
(公開日:2020年5月12日)